「カナモリさんはコンシューマー向け(B to C=Business to consumer)のマーケティングが専門なんですか?」とよく聞かれる。実はそうではない。対企業向け(B to B=Business to Business)の生産財やITソリューションに関連するクライアント業務も結構手がけている。当Blogで記事として取り上げないのは、当然のことながらクライアント関連のことは書けないだけでなく、事例として解説しやすいB to Bの情報があまり流通していないことに起因する。
つまり、B to B においては、営業担当者も「商品の一部」であるということなのだ。
コトラーの「製品特性分析」では、製品の価値を3層に分解してとらえる。顧客が製品を手に入れて実現したい価値を「中核」という。そして、それを実現するために欠かせない要素が「実体」。中核の実現に直接関係ないが、その魅力を高める要素が「付随価値」という。
製品の複雑さが高まったり、消費者の欲求の高度化したりという変化が顕著な今日、消費財でも「付随機能」のレベルが重要になってきているのは事実だが、B to Bにおいては、それ以上に付随機能が重要なのだ。なぜなら、新規のITソリューションや生産ラインの機器を導入したら、安定稼働するまでのサポートが欠かせない。つまり、サポートは「付随機能」であり、商品の一部である。
さらに、導入に際して、その製品は自社にとって最適か。問題が起きないかといった情報を得るのは、購買担当者の死活問題だ。前述の通り、導入の正否は担当者の評価にも関わる。信頼できる営業担当者とそれがもたらす情報は、購買担当者にとって「対価を払うべき商品の一部」であることは間違いない。故に、商品の本体価格だけでの比較ではなく、営業担当者の価値までが「カスタマー・バリュー」として評価あれるのである。
B to Bにおける最も重要な要素は、自社の優位性やポジショニングが「QCD」でほぼ表されるという点だ。QCDとは「Quality(品質)」「Cost(価格)」「Delivery(納期)」である。B to C においては自社の優位性を示す「ポジショニング」を、顧客の「KBF(Key Buying Factor=購買決定要因)」を基本として手を変え品を変えてアピールする方法を考える。しかし、前述の通り、企業の購買意志決定は極めて経済合理性に基づいているため、「QCD」でほとんどが決まってしまう。
例えば、有名な日本電産の永守会長のスローガンは「確かな技術、値段は高め、しかし納期は半分」である。つまり、Quality=最高・Cost=高め・Delivery=半分というわけだ。
営業担当者は価格や納期に関して、各部署や上司などと調整に最善を尽くしてクライアントに最もフィットする提案を行おうと努力するだろう。しかし、品質に関しては、営業担当者の範疇でない場合も少なくない。
もちろん、いわゆるソリューションなら、営業担当者がクライアント企業の問題を正確かつ、詳細に聞き出すことが適切なソリューション(問題解決)を提案するのに欠かせない。
しかし、いわゆる仕様が決まっている製品でも、営業担当者のアプローチの仕方次第では、それが製品の「付随機能」として、製品の一部として評価され、本体価格だけの価格勝負を回避できるということをマッキンゼーの記事は示唆しているのだ。
今回のマッキンゼーの記事は極めて基本的なことを述べているが、1,252社もの企業を対象としたて行った実証調査の結果である。「基本」と思われるようなことも、その意味を十分理解して励行することが重要なのだ。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。