「能」を磨き、「観」をつくり、「志」を抱き、「人」と交わっていくこと。この4要素の循環をうまく起こすことが、たくましくキャリアを展開させていくための要諦である。
◆キャリアをつくる4大要素
地球の4大要素をよく「地・風・火・水」などという。これにならって、個々のビジネスパーソンがキャリアをつくる4大要素をあげるとすれば、私はそれが「能・観・志・人」ではないかと思っている。
つまり、私たち一人一人が職業人として、自分なりに満足のいくキャリア(働き様・生き様)を体現していくためには、「能」を磨き、「観」をつくり、「志」を抱き、「人」と交わっていくことが基本要素になる。細かくは次のとおりだ。
【能】を磨く
・知識、経験(ナレッジ)を得る
・技能(スキル)を身につける
・行動特性(コンピテンシー)を強める
【観】をつくる
・価値軸(バリュー)を持つ
・自律意識、プロ精神(マインド・スピリット)を醸成する
【志】を抱く
・目標像(イメージ)を描く
・方向性(ベクトル)を持つ
・情熱(パッション)を湧かせる
・使命(ミッション)を感じる
【人】と交わる
・人脈(ネットワーク)を築く
・人から啓発(インスピレーション)を受ける
◆能力を磨くだけでは不十分
確かに日々の業務をこなし、キャリアをつくっていくためには「能を磨く」ことが大事だし、それが一番の基本になる。だから、私たちは自己研鑽を怠ってはいけないし、会社も従業員にいろいろな能力研修を施そうとする。
しかし「能を磨く」ことは、キャリアをつくる上で一部の役割しか果たさない。技能や知識、経験といった要素は、あくまで仕事を成すための手段にすぎないからだ。手段の取得に終始しているキャリアには早晩行き詰まりがみえてくる。
30歳前後からは、仕事の目的(=目標+意味)を自分なりに見出し、自分の仕事をつくり出していかなければキャリアの展開は望めない。目的観なしには、能力的にもマンネリ感や限界感が出てきて、「能を磨く」意欲も低下してくる。キャリアの停滞はそのようなところから始まる。
◆4要素の好循環がキャリアを大きく展開させる
そこで重要になってくるのが、「観をつくる」ことだ。すなわち自分の価値軸を持ち、自律的に考え、自ら創造した選択肢にリスクを負って果敢に行動することだ。たとえ失敗しても、自分の「観」で定めた行動だから悔いはないはずだし、その失敗は未来に必ず活きるものになる。
自分の中に「観」ができてくれば、次はそれを基盤として、目指すべき理想像は何か、情熱を燃やすことのできる目標は何かといった「志」を抱けるようになる。
そうすれば、それを実現するためにどんな「能」が必要になってくるのかが明確になる。となると、それを獲得するためにがんばろうという具体的で新鮮な意欲が湧いてくる。キャリアの停滞や中だるみを打破するブレイクポイントはまさにここにある。
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2009.10.27
2008.09.26
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。