吉野屋、特大盛りのマーケティング

2010.04.18

営業・マーケティング

吉野屋、特大盛りのマーケティング

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

吉野屋が、牛丼の特大盛りなるメニューを始めた。そのお値段、実に730円である。並みの2倍以上になる。牛丼といえば金森氏だが、氏に習って少し考えてみた。

特大盛りとは何であるか。

特大盛りがでた。新メニューである。これが一体、どのようなバランスになっているかといえば、ご飯大盛り・牛大盛りの倍。ちなみに特盛りはご飯大盛り・牛並盛りの倍である。牛肉/ご飯バランスの分子が特盛りよりでかい。吉野屋ラバーとして、これは試さずにはおけないメニューではないか。

そもそも牛丼の大盛りに対しては、不信感をぬぐえないのだ。大盛りとは、ご飯は大盛りだけれど、牛は並盛りと同じ、もしくはちょっとだけ多いぐらいと信じてやまないのである。決して吉野屋を嫌いなわけではないが、牛丼ラバー(正確には牛丼の牛肉ラバー)ゆえ大盛りに対しては疑惑の目を向けずにいられないのだ。

では、特大盛りはどうなのか。

いや、腹一杯になった。特盛りと同じように、たまごを真ん中に落とす。もちろんたまごがご飯にしみ通るように、少し深めに穴を掘る。ここで異変に気づく。特盛りの場合は、表皮の牛肉層がそれほど分厚くない。よって、少し肉をかき分けるとすぐにご飯層が顔を出す。

ところが、さすがに特大盛りである。ちょっと掘ったぐらいでは、ご飯ゾーンには届かない。すなわち、牛肉の盛り具合が特盛りを凌駕している。当たり前といえば当たり前だけれど、これはうれしい裏切りである。味は、いうまでもない。吉牛の味だ。何も問題はない。

並盛り二杯分以上の価値はあるのか

この特大盛りが730円である。これにたまごをつけると780円である。千円札を出して受け取るおつりでは、スタバのコーヒーを買うことはできない。牛丼を食って、コーヒーを買って、仕事場でひと休みパターンを実行するには、予算オーバーである。そもそも牛丼に800円近く出すというのは、ちょっとびびる。

それでも満足感があれば、牛丼に対して冷静を保てないときの筆者の価値/対価バランスは成立する。

結果分析をするなら、確かに腹はいっぱいになった。満腹で文句を言うと罰が当たりそうだが、冷静に考えて、これは明らかに食べ過ぎだ。といって肉の量に文句をつけているわけではない。肉とご飯トータルでみて、50歳の胃袋にはいささかきつい。

しかし、特定ターゲットに対しては著しく受けるのではないか。仮に特大盛りが30年前に存在したなら、野球をしていた筆者は二日に一度ぐらいのペースで食べていたのではないか。つまりがっつり食って腹一杯の幸せ感を味わいたい人には、特大盛りは選択肢としてありだと思う。

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