インターネットリサーチの株式会社アイシェアが洗濯機に関する調査報告を発表した。
「バリューライン」という考え方がある。横軸に製品・サービスの「価格」、縦軸に「価値」の二軸を取る。すると、「安くてそれなりの価値のもの(エコノミー)」「そこそこの価格で、ほぼ妥当な価値のもの(中価値)」「高くて価値の高いもの(プレミアム)」という比例した関係が出来上がる。これがバリューラインだ。
洗濯機や携帯電話は現在、「プレミアム」に集中しているのではないだろうか。回転式・ドラム式・乾燥機能付とタイプがあり価格も様々であるが、7万、8万、10万円越えから20万円近いものまである。
もし、消費者がその価格を嫌ったらどうなるか。
世界の家電市場におけるいて、白物家電は既に日本のお家芸ではない。白物家電のうち、冷蔵庫と洗濯機の世界シェア№1は、昨年から中国のハイアール・グループが握っている。白物家電全体でも2004年から世界第2位である。洗濯機は日本でソフマップなどが扱っている。価格は2万円を切るものから3万円ちょっととかなり安価な「エコノミー」価格である。洗濯機のハイアールだけでなく、日本の家電市場においては安価な外国勢がぐっと存在感を増している。
バリューラインを考えた時、競合に勝つには「バリューラインを超える」ことが必要だ。つまり、「価格以上の価値」を提供するのである。例えば「低価格なのに中間価格と同等の価値=グッドバリュー」「低価格なのに高価格のものと同等の価値=スーパーバリュー」という存在になる。
価格.comなどで、ハイアールの洗濯機の評価を見ると、「騒音が大きい」というような意見が散見される。騒音はアイシェアの調査でも37.2%と一番の不満要因である。一方で、評価では「価格なり」とあきらめる意見も多い。それ以上に価格の安さと機能のシンプルさを評価する意見が多いのである。つまり、「安くてそれなりの価値のもの(エコノミー)」としてのポジションをしっかりと確立しているのである。
もし、日本の家電メーカーが同等の価格で不満要因を解決できれば、「グッドバリュー」のポジションを獲得できるだろう。そうした戦い方はできないのだろうか。
この洗濯機の例は一つの象徴ではないだろうか。高機能化と高価格化を進めるだけでなく、もっと「引き算」をしながらバリューラインを超えることを狙うような戦い方が。
今年は「種の起源」を著わしたダーウィンの生誕150周年にあたり、ちょっとしたブームだ。彼が研究した、隔絶した南海の孤島における独特の進化になぞらえて、世界に通用しない日本独特の製品開発を「ガラパゴス現象」などと呼ぶ。少子高齢化の進行で縮む日本市場においていかにそれが危険か警鐘を鳴らす識者は多い。
問題は、日本市場への「引きこもり」だけに留まらない。
ガラパゴス島は、近年、海水温の上昇によって海草が枯れる「海焼け」が進行し、海イグアナが絶滅の危機に瀕しているという。それだけでなく、地球温暖化の影響は枚挙にいとまがないようだ。独特の生物を脅威に追いやるのは、より生命力に富んだ外来種の影響も大きいという。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。