全国で市民病院問題が噴出している。すでに廃止を決めた自治体、大幅な規模縮小を図る自治体がある。そんな中、民間移譲での再生を企画、自ら再選挙に打って出ることで信を問い、強力に改革を進めているのが樋渡武雄市長だ。その革新的な改革プロセスを紹介する。
■労働環境がさらに過酷になったと。
-医師の燃え尽き症候群ですよ。真面目で良心的な医師ほど心理的にきつくなってしまう。そこにモンスターペイシェントの存在が追い打ちをかける。しかもマスコミは勤務医のちょっとしたミスを、まるで鬼の首でも取ったかのように報道してつるし上げる。それでいて平均的な報酬は開業医の半分もない。それでも目の前の患者さんを助ける、治すためにがんばっています。
■医師不足は池友会でも悩みではないのでしょうか。
-実は新しい研修医制度が我々にとっては追い風となっています。ここ2年で60人近くが研修に来て、そのうちの半数弱が研修後も残っていますから、グループ全体で250名を超える医師がいます。
■なぜ、武雄市民病院の移譲先として手を挙げたのでしょうか。
-理由は三つあります。まず地域の医療崩壊に何とか歯止めをかけたかった。助けを求めている患者さんが現実におられる、我々なら何かお手伝いできる、それならやろうじゃないかと。人道的な見地からの判断が第一です。さらに提携相手が樋渡啓祐という人物だったことも大きな要素です。彼は極めて有能なテクノクラートであり、かつアイデアマンです。樋渡氏と一緒なら何とかなる、そう思わせるだけの人物ですね。そして三つめが、今回の事例で我々が全国のモデルケースになれるのではないかとも考えました。
■モデルケースとはどういう意味でしょうか。
-武雄市は人口が5万人しかいない小さな町です。この環境で7階建てのヘリポートを備えた病院を成り立たせるのは本来なら非常に厳しい。しかし、視点を変えればどうか。設備を整え、重症の患者さんが広域から集まるレベルの高い信頼される病院にすれば必ずやっていけるのです。病院経営もきちんとした理念があれば成功する確率は飛躍的に高まるのです。
■武雄方式で全国の市民病院問題が解決するわけですか。
-もちろん地域性に違いはあるし、条件が異なれば、どこでも一律に成功するとは言い切れません。しかし、可能性はあります。診療圏を広域に設定し、高度な治療を行う。地元医師会とも決して対立するのではなく、うまく補完関係を結べるのです。
■全国から視察が来ているそうですね。
-注目を集めているのは間違いないですね。樋渡市長の決断が正しかったことを証明するためにも、また日本の医療崩壊を救うためにも、これからが我々にとっての正念場と覚悟を新たにしています。
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FMO第28弾【佐賀県武雄市長、武雄市立武雄市民病院】
2009.10.29
2009.10.22
2009.10.15
2009.10.06