吉野家ホールディングスの中核事業である牛丼の吉野家が、今後中国市場を成長の基盤とするようだ。
「新製品開発」は次々と新商品を既存市場に投入していく展開を意味するが、フードチェーンで考えれば、異種の業態のチェーンを拡大して顧客に複数ブランドを利用させることになるだろう。
吉野家ホールディングスのグループ展開では、2009年2月期の時点で中核の「牛丼関連事業セグメント」の売上げが約6割に上る。次に大きいのが、テイクアウト鮨の「京樽」、江戸前鮨専門店「すし三崎丸」、回転鮨「海鮮三崎港」「うおえもん」などを展開する「寿司関連事業セグメント」で約18%を占める。他にも讃岐うどんの「はなまるうどん」やカレーうどんの「千吉」などの人気店も擁するがセグメントとしては大きくはない。(以上、同社IR情報より)
加えて、傘下の「ステーキのどん」が食中毒問題で約8億円の営業赤字に陥ったり、子会社のアール・ワンが運営するラーメン事業「びっくりラーメン」が業績不振で事業売却もできずに廃業するなど、赤字決算にいたる足を引っぱる要因として作用している。
つまり、吉野家ホールディングスの中核事業はあくまで「吉野家」であり、「新製品開発」はあまりうまくいっていないといえるのだ。
「新市場開拓」では、新たな顧客属性を開拓するという新市場と、物理的に他の地域に展開するという新市場の2通りの意味がある。前者の新たな「顧客属性」で考えれば、同社の顧客はファストフード客やファミリーであり、いわゆる「高級店セグメント」に伸長することは難しい。また、そのセグメントは経済停滞の中、例えば「レストランひらまつ」など、よほど運営ノウハウのある企業以外は苦戦を強いられている。
となると、吉野家ホールディングスに残された選択肢は、中核事業の「牛丼」で、国外などの物理的に他の地域、新市場に展開する以外に残されていないことになる。
MSN産経ニュースによれば<外食産業総合調査研究センターによると、20年の国内外食市場は前年比0・5%減の24兆4315億円と、ピークの9年から16%も縮小した。人口減少による先細りは避けられず、市場規模の日中逆転は時間の問題だ>という。それに対して中国市場で吉野家は<一店舗当たりの来店客数は、日本の平均的な店舗の1・6~1・7倍に上り、繁盛店では2~3倍の集客力を誇る>と大繁盛だ。
顧客の評判もよく< 牛丼並み盛の価格は13~15元(約173~199円)。5~6元で食事ができる現地の飲食店に比べ割高だが、「経済成長による所得増で割高感が薄れ、来店客数の増加につながっている」(同社)という。中国でもヨシギューは“安い”に変わりつつある>という。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。