値の付けどころがシャープでしょ！

その理由は明らかで、要するに高かったのだ。先発メーカーの東芝が発売していたLED電球の価格が、一つ1万円ぐらいである。たかが電球一個に1万円と言われてしまうと、いくら環境意識が高い人であっても二の足を踏むのは当然だろう。

そこでシャープは次の二つを考えたのではないだろうか。まず現状は絶対的なチャンスであると。つまり照明メーカーとしてブランド力のある東芝がLEDでも先行してはいるが、ユーザーの支持を集めているわけでは決してない。後発にとっては絶好のチャンスである。

シャープの、とてもシャープなプライシング戦略

では、このチャンスをいかに生かすのか。決定的なカギを握るのがプライシングである。現状の1万円が高過ぎるためにユーザーからそっぽを向かれているのは明らかだ。では、いくらにすれば納得してもらえるのか。

出てきた答えは簡単だったのだ。「寿命が白熱灯の40倍なら、価格も40倍が相場でしょ！」。誰が言ったか知らないが、これぞビンゴォーである。現状価格1万円の商品に対して、まさに半値八掛け。シャープは4000円というプライスをぶつける。

その結果、先行注文が殺到する。同時にシャープは一挙にプライスリーダーのポジションにも躍り出る。これが新たな動きを引き起こす。

もしかしてシャープの狙い通りの展開？

まず先行メーカーが価格を下げた。当たり前だ、ほぼ同じ製品を半値八掛けで売られては勝負にならない。こうして価格が揃ってきたが、シャープの優位性はまず揺るがないところだ。LEDに関するここ三ヶ月ほどの報道をみれば、どの記事も「まずシャープが……」といった書き方になっている。相変わらず「目の付けどころのシャープ」なイメージは、否応なく高まっている。

さらに、そうした報道自体がLEDマーケット自体の認知を高める。つまりシャープと先行メーカーの東芝あたりの二社だけでちまちまと競い合っていたのでは、決して届かなかった層までもがLEDに対する好感度をもつようになってきた。

このままマーケットが拡大し、シャープがトップポジションを握り続ければどうなるか。LEDがクリティカルマスに達するために理想的なプライスは2000円ぐらいだという説もある。だとすれば他社が4000円で足並みを揃え、マーケット認知が十分に高まった時点でシャープは一挙に価格を半分に下げるのではないか。

もちろん、そのための生産工程をきっちりと整備し、いち早く量産体制をつくって採算ラインに乗せた上で。もし、そうなるなら、さすがに「目の付けどころがシャープでしょ」となるのだが、さて。この先一年ぐらいのLEDマーケットは注目である。

※参考資料：
京都新聞2009年7月11日付朝刊13面記事
日経産業新聞2009年10月2日付9面記事