赤や黄色や緑のビビットカラーが目にも鮮やかな「グラソービタミンウォーター」。NY生まれのセレブ御用達飲料という触れ込みで、都内各地で大規模なサンプリングやイベントキャンペーンを展開し大人気。7月からの販売実績も好調だという。
■イノベーション論で考えてみる
上記の通り、グラソービタミンウォーターの価値構造と価格のプレミアム部分で重要なのは「気分」に起因するところが大きい。その気分に乗ってサンプルを受け取るだけではなく、200円を払って実際に商品を購入しているのはどんな人々だろうか。
E.M.ロジャースのイノベーション普及論でいうところの「イノベーター(Innovators=革新的採用者)」であろう。しかし、新しいものにすぐ飛びつく「イノベーター(Innovators=革新的採用者)」が採用しただけでは普及は継続しない。そもそも、ロジャースによれば、市場にイノベーターは2.5%しか存在しないとしている。
その価値を正しく理解し採用する層を「アーリーアダプター(Early Adopters=初期採用者)」という。市場に13.5%存在し、自ら情報収集を人への伝達力も強いことから、この層が採用すると、市場全体への浸透が加速するといわれている。
続いて採用する層は「アーリーマジョリティ(Early Majority=前期採用者)」である。比較的慎重派な行動を取るが、平均より早くに新しいものを取り入れる傾向がある。市場全体に34.0%存在するといわれているここまで取り込めれば、市場の半数を抑えたことになる。
■スキミングプライシング:値段を下げて順次ターゲットを拡大する?
新商品の展開において明らかな差別化要因をもってイノベーター層を取り込み、プレミアム価格をもって展開する価格設定を「スキミングプライシング(Skimming Pricing=上澄み吸収価格設定)」という。読んで字の如く、市場の上澄みのオイシイところを吸収し、さっさと投資回収をするのがキモである。しかし、サンプリングやイベントに投下した費用は莫大であり、なかなか回収できるものではない。だとすると、もっとターゲット層を拡大する必要がある。
新商品の価格設定で対極にあるのが「ペネトレーションプライシング(Penetration Pricing=市場浸透価格設定)」である。収支ギリギリの低価格で一気に市場に浸透させシェアを確保することを目的とする手法だ。その場合、最初から収支ギリギリなので価格は下げられない。幅広いターゲットに一気に浸透させてシェアを取ることがキモなのだ。逆にスキミングはターゲットを見極め、普及状況を考慮して段階的に値下げをして裾野を広げていくことができるのである。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。