『めざめるカラダ 朝カレー』が、レトルトカレーの棚で定番化しつつあるという。朝からカレーなんか食べるか? と常識的発想にとらわれていては決して登場しなかった商品だろう。しかし緻密な戦略を背景に持つこの商品は、売れるべくして売れたのではないだろうか。
母親のための3つのメリット
まず温め不要である。あつあつごはんにかけるだけでオッケーである。めっちゃ手間が省けるではないか。にもかかわらず、子どもは基本的にカレーが大好きである。「うわ?、朝からカレーやん。めっちゃうれしいで、母ちゃんおおきに(というのはナニワバージョンですな)」となるだろう。
しかも、である。カレーは脳の血流を良くし集中力を高めるのだ。つまり母親からすれば、思いっきり手間を省きながら、子どもが喜び、かつ子どものためにもなる朝ごはんが、朝カレーなのである。もちろんエンドユーザーとなる子どもたちだって、朝カレーは大歓迎だろう。この組み立て、めちゃくちゃうまいと思う。
ポジショニングにもオリジナリティ
その上、ハウスは朝カレーに独自のポジショニングを与えた。これは時間節約を考えたからか(=母親メリット)、あるいは実際のユーザーとなる子どもにとっての食べやすさを重視したからかは、今のところわからない。ともかく従来のレトルトカレーと比べれば、この朝カレーのポジションは明確に違う。
どちらに重点を置いて開発されたのかはおくとする。ただ、いずれにしても『朝ゴハン専用として考え抜いた開発された』イメージは、十分につく。すなわち、お母さんたちにとって、このカレーを選択すべき理由付けとなる。
プロモーションも抜かりなく
とまあ緻密に組み立てられたであろう戦略があるのだから、プロモーションだって手抜きなしである。「たくましさ」をアピールするために、楽天イーグルスの田中将大投手をイメージキャラクターに起用し、「母親が傾聴する午前中に集中的に(テレビCMを)投入した(日経MJ新聞2009年5月20日、3面)」。
まさか、今年のマー君の大活躍を読んでいたはずもないだろうが、開幕から不動のエースとして連勝街道を突っ走る彼の好調ぶりは、格好のバックアップとなったのではないか。
丹念にマクロ分析をした上で流れを読み、セオリーに従ってSTPを組み立てる。しかも狙いは、あくまでも絶対需要である。そこで見えてきたのが、母親への強力なメリット。ここに気がついたとき、企画チームは小躍りして喜んだんじゃないだろうか。
しかも、そうした努力を後押しするかのようなマー君の奇跡的な活躍。売れるべくして売れたカレー、それが『めざめるカラダ 朝カレー』なのだ。
※参考資料
日経MJ新聞2009年5月20日3面
『マイ・ビジネス・ノート』今北純一/文春文庫
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24