一寸先は闇。将来のことについてなど、誰一人として確かな予言はできはしない、というが本当だろうか。例えばサブプライム問題である。アメリカ発の金融危機が日本を襲うことは、少なくとも2年前には確定した未来だったという。
たとえば2012年、日本の大都市はどうなるか
なぜ2012年なのか。1947年から1949年に生まれた世代、つまり団塊の世代が65歳を迎え始めるのが、この年からだからだ。団塊引退については早ければ2007年あたりから、社会的にインパクトがあるといわれてきた。
しかし、2009年現在、つまり1949年生まれの方たちが60歳を迎える年になっているが、際立った変化を感じることはまだない。ただし、変化は彼らが完全にリタイヤする3年後ぐらいから始まるのではないか。そんな見立てを日経新聞ではしているようだ(日本経済新聞2009年4月17日付け朝刊3面)。
この見方は一理あると思う。実際にはすでに60歳前から団塊世代の方たちは会社勤めから退きつつあるはずだ。だが仮に50代後半で(って自分にとっても、もはや10年後である)引退したとしても、まだまだ元気である。そのライフスタイルが急に変わるわけでもないだろう。
しかし、それから10年近く経つと、肉体面精神面でさまざまな変化が目立ってくるのではないだろうか。そのとき顕在化する問題が、都市に高齢者が多くなることだ。
高齢者を想定対象としていない都市のインフラ
筆者はNPO活動を通じて、東京、大阪、名古屋の地下鉄の駅をつぶさに見ている。各地の交通局など行政サイドの担当者と面談した経験も踏まえるなら、特に大問題となるのはやはり東京だろう。
東京の人口密度は1キロ四方あたり5500人ぐらいで言うまでもなく世界トップクラスである。狭い土地に多くの人を詰め込むためには垂直方向に空間を活用するしかない。従って例えば東京の地下鉄新線はいずれも大深度とならざるを得ないのだ。
もちろん新線は交通バリアフリー法に従い、高齢者にも比較的優しい造りとなっている。しかし、総体的に東京地下鉄のバリアフリー化は残念ながらあまり進んでいない。確か一昨年に国土交通省が発表したバリアフリー完備率データによれば、東京メトロが全国でも最低だったはずだ。東京メトロの駅にはエレベータが極めて少ないのだ。
問題はメトロだけとは限らない。そもそも東京のような大都市は、高齢者の存在をある程度切り捨てることで成立しているのだから、今後、高齢者対応で問題が顕在化する確率は高いだろう。
問題あるところビジネスチャンスがある
ということは、今後、大都市の高齢者を対象とした生活サービスについては、かなり高い確率でビジネスチャンスがあると考えて良いのではないか。たとえばコンビニの店舗を拠点として、高齢者にどんなサービスを提供できるのか、と考えればすでに実施している企業もある。
少子高齢化は問題だ。とここまでは、誰もが口にし、また同意もするところなのだろうが、じゃ、問題があるならビジネスチャンスもあるはずではないかと一歩突っ込んで考える。さらに、その問題はいつ顕在化するのか、あるいはどこで顕在化するのかと、視点をいわば縦横に広げてみるときに、おぼろげに感じるだけだったビジネスチャンスが、より具体的な姿を見せるのではないだろうか。
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