超・基本ではあるけれど、その業界にいないとなかなか解らないのがB to B(Business to Business=企業間取引)の世界。コンシューマー相手のビジネス(B to C=Business to consumer)の世界にいる人にはなかなか未知の世界である。解っている人には「何を今さら」ではあろうが、様々な人から繰り返し質問されることなので、この際、整理してみようと思う。
但し、「B to Bマーケティングの難しさ」という本稿のタイトルに併せてこの項の結論を出すなら、例示したようなQCDでの明確なポジショニングを示すのは容易なことではない。調整がしやすいコスト(C)部分で勝負して利益が出ないどころか、赤字に陥ることもある。クオリティー(Q)の一つにはアフターサービスや技術サポートなども含まれるが、いわゆるそうした「付加価値」で勝負し、結果として「付加コスト」を延々と引きずってしまうこともある。納期(D)を短くせんと無理なスケジュールを組んで、デスマーチに陥ることもある。
クライアント企業の極めてシンプルな経済合理性であるQCDに適合させるための難しさが、B to Bの一つめの難しさなのである。
■B to BはDMU次第
QCDに続いてDMUとかって、いい加減に略号アルファベットはどうかと言われそうだが、DMUもB to Bで極めて重要な要素なのだ。Decision Making Unit(購買決定単位)。企業がモノを購入する際の意志決定に関与してくる様々な人々のことである。
例えば、ある企業の部門が必要としている業務システムを納入しようとしよう。キーマンはその部門のシステム導入担当者だ。スムーズに導入し、業務成果が出ることが彼の関心事である。
ソリューション提案に対して最終的に決済をするのは彼のビジネスラインの上司だ。つまり、ディシジョンメーカー。金額と決済範囲で役職レベルは異なるだろうが、上司の関心事は導入成功や業務成果はアタリマエとして、いかに早く使い物になるかという納期に関心が高くなる。また、自分の決済額の中でいかにコスト効率がいいかも気になるので、コストにも厳しい。
システム導入に影響を与える、インフルエンサー(影響者)という人々も登場する。ITのソリューションなら、そのシステムを保守・管理するIT部門の担当者が出てくるだろう。彼の関心事は、トラブルなく動き続けることである。また、業務システムであれば、その業務の経験が長い熟練者も強力なインフルエンサーだ。「そんなシステムじゃぁ、仕事は回らないよ」などといわれた日には!。そう言わせないためには、使い勝手や、きちんと成果が出るような品質が担保されていることが必要となる。
DMUの洗い出し。その重要性は、各々の関心事をきちんとケアすること。各々の関心事が実現されれば、味方になってくれるだろう。しかし、味方作り以上に重要なのは、「決して敵を作らないこと」である。組織といえども、そこにいるのは「感情の動物=人」である。ここ、重要なトコロだ。
もう一つ、DMUの厄介なことは、企業組織は常に異動があるということだ。せっかくDMUをつかんで関係を構築しても、異動一つで一からやり直しになることも少なくない。ある意味、B to Bば賽の河原に似ている。しかし、それを止めるわけにはいかない。それが第2のB to Bの難しさであり、悲喜こもごもが発生するゆえんである。
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2009.04.03
2015.07.10
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。