リカルデント ガム、その絶妙なポジショニング

2009.03.17

営業・マーケティング

リカルデント ガム、その絶妙なポジショニング

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

リカルデントの新シリーズ「スマートタイム」。ガム市場で強大なシェアを持つロッテに挑むキャドバリーが、秀逸な戦い方をしている。

しかし、ガム市場におけるロッテの存在はあまりに巨大だ。
ガムのシェアを示すデータは少ないが、2002年の全日本菓子協会の発表によると、ロッテのシェアは63%に上る。キャドバリーはシェア2位とはいえ、ロッテのシェアはあまりに大きい。
クープマンの目標値から考えても、よほどの不測の事態がなければトップの座は安泰とされる「安定的シェア(41.7%)」を大きく超え、短期的には首位を奪われることがあり得ない「独占的シェア(73.9%)」に迫る勢いだ。店頭での販売シェアも、ロッテのラインナップにキャドバリー社のラインナップは頭を押さえられた格好になるという。

同じ「歯に良い」というポジショニングでは、いくら機能強化したところで、リーダーの戦略である「同質化」を回避することはできない。いくら「こっちの方が機能が上です!」と訴求しても、強大な広告宣伝やセールスの力の前にはかき消され、ポジションが被されてしまうのだ。

そこで、リカルデントブランドの切り札として2008年10月20日に発売されたのが、「リカルデント スマートタイム」なのだろう。
「ガムで、コバラ。」「これからの、新・間食ガム」というコピーが示すとおり、「間食として食べるガム」という、全く新しいポジショニングを示してきたのである。
シトラス&ベリー味がまず上市され、<ガムの内側からシトラス&ベリーの「ジューシーリキッド」のおいしさがたっぷりあふれ、口の中に広がります。そのカロリーは一粒たった3kcal!>と製品特性がアピールされている。
「ガムで小腹が満たせるか?」と思って試すと、「ジューシーリキッド」の濃厚な味わいで食べ応えが感じられる。しかも、シュガーレスで1粒3kcalだ。同様な意見をWeb上でブロガー達が異口同音に述べている。

さらに強力な新製品も投入された。3月9日発売の「マイルドチョコレート」味。
<噛んだ瞬間、ガムの中から本格的なチョコのおいしさがたっぷりあふれ、口の中に広がります>とアピールしている。
「ガムは歯の健康を保つためのもの」と、いつしかキシリトールの呪縛がすり込まれているからか、「ガム×チョコレート」という組み合わせには違和感が働いた。しかし、シュガーレスであるという。食べてみると、まさにチョコ。しかも、長く噛んでいられるため、1粒でずいぶんとたくさんチョコを食べたような満足感がある。

このキャドバリーの戦略のすごいところは、「スマートタイム」シリーズに関しては、全く「歯に良い」というポジショニングを後ろに隠しているところだ。シュガーレスであるばかりでなく、スマートタイムもCPP-ACP配合であるので、しっかり歯に良いはずだ。しかし、それは言わない。あくまで「間食サポート」であり、「小腹を満たせる」なのである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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