正直なところ、コンサルタントとしては「マーケティング調査なんか、誰がやるもんか」という気持ちでいます。とくに得られるサンプル数に限りのある中小企業にとって、中途半端なマーケティング調査は新製品の発売日を遅らせるだけの障壁でしかないケースすらあるのです。
今度は国内の事例。花王がおこなった「健康エコナクッキングオイル」のマーケティング調査で、買いたいと答えた人は10%にも達しませんでした。しかし、花王はこの結果とは関係なく発売し、商品は大ヒット。被験者は、新しい商品をうまく理解できなかったのです。
だというのに、今日もどこかでマーケティング調査が行われている。大手企業の責任を取りたくない担当者と、看板ばかりが大きいコンサルファームのコンサルとがとりたがる安心・安全の手法なのだから「しょうがない」ですよね。そして、販売に失敗したとしても、数字に従った結果ですから「しょうがない」ですよね。
マーケティング調査に対する否定的な話ばかりしてきました。けれど、すべての調査が役立たずだと言うつもりはないんです。
ただ、調査種別の選択や適切な設問作成は、誰にでもできますというものでは決してないこと。さらに、インタビュアーや分析者には相当に高度な反射神経が求められること、は確実ではないでしょうか。
また、有効と思われるマーケティング調査のひとつにテスト・マーケティングがあります。これは地方の1都市を選んで実際に商品を発売し、広告も流して販売実績をみるもの。静岡や広島などは、日本全体と年齢分布が近似である地方としてよく選ばれます。福岡は新し物好きの風土がよく知られています。
このやり方なら、見栄もうそもなく、顧客が実際に財布を開くかどうかがよくわかります。そして、販売動向が芳しくなければ、あっさりと発売を中止してしまうわけです。
けれども、ある意味、これは資金力のある大企業の手法ですね。その点でいえば、いまはネット上で低コストにアンケート調査ができる環境ができてきています。何らかのインセンティブと引き換えに得られる、こうしたネット的な数字に偏りがないとは言い切れませんが、今後、有効な手法となっていくことは論を待ちません。
かくいう私は、企業の大小を問わず、とにかく市場に投入してみることをお勧めします。とにかく売ってみて、レジがチンと鳴るかどうかを試してしまうのです。
ドッグイヤーといわれる現在、どの企業も調査に多大なカネと人と時間をかけていられるわけではありません。いまやマーケティング調査好きの外資系企業も試行錯誤中であるわけで、旧聞に属しますが、一度日本市場に参入しながら撤退したあと、山一のスタッフを吸い上げて有利にもう一度再参入したものの、結局はそれも縮小している外資の証券会社をみてもわかりますね。
日本人のマネー運用性向や市場規模ぐらいはきちんと調査してもよかったのに、と思わざるを得ないけれど。いや、調査はしたけれど、分析に失敗したのかな。
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1991年のアメリカ映画「BIG」の中で、何も知らずに玩具メーカーの社員になってしまったトム・ハンクス(実はまだ子供)が、社内で出くわした社長の言葉を聞き、何気なく質問します。「マーケティング・リサーチって、何です?」。リサーチの結果に納得がいかない社長は皮肉と受けとり、嘆息。「私も教えて欲しいよ」 と応じるのでした。
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