脳科学者、茂木健一郎さんが探究する「クオリア」の概念を、商品開発やマーケティングなどのビジネス現場が取り込んでみると何がみえてくるか。
このことを掘り下げていくと、哲学的な問題になります。
つまり、目の前に存在する物体や事象といった客体を
私たち人間は、100%完全に認識をすることはできず、
その客体の“写し”を、クオリアとして各々が感ずるに過ぎないという議論です。
(このことは、本記事ではこれ以上触れませんが、
茂木さんの著書に詳しいので、一度お読みなると面白いと思います)
そのようなことから、商品のつくり手がやらねばならないことは、2つです。
1つには、客体である商品自体をクオリア・リッチなものにすること。
その際には、
機能(スペック)や便益(ベネフィット)、デザイン、価格など直接的な要素に手を施すことと
物語性や象徴性、文化性、メッセージ性などの間接的な要素にも手を施すことの
両方が求められるでしょう。
そして2つめに、
そうした商品の実体が十全に、あるいはそれ以上に、
買い手の中でクオリアとして立ち上がるように、コミュニケーションを施すことです。
冒頭紹介した「iPhone」の20分間のビデオは、
まさに、そうした説得力あるコミュニケーションメディアで、
私自身は、iPhoneをまだ、実際に手に取ってもいないのですが、
充分にその商品のクオリアを感じることができましたし、
みずからの情報生活の中で自分がiPhoneを使っているシーンも容易に想像ができました。
おそらく、iPhoneの購入前に、全世界の数多くの人々は、このビデオを観て
パソコン画面を前に、
「Wow ! It’s too cool !」とか何とか、そんな声をうならせたことでしょう。
この“too cool!”といった感じこそ、
まぎれもないiPhoneのすさまじきクオリア・パワーなのです。
以上、『クオリア』をめぐって、書き走りました。
もしかすると、「クオリア」の概念を矮小化あるいは認識不足で的外れなことを書いたかもしれません。読者のご高覧に供します。
*参考文献
・茂木健一郎『意識とはなにか』ちくま新書、2003年
・茂木健一郎『脳と仮想』新潮文庫、2007年
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2009.10.27
2008.09.26
キャリア・ポートレート コンサルティング 代表
人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)はじめ「コンセプチュアル思考研修」、管理職研修、キャリア開発研修などのジャンルで企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。