値下げ戦略の効果を考える

2008.12.09

営業・マーケティング

値下げ戦略の効果を考える

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

景気失速に追い打ちをかけるモノの値上げラッシュ。しかし、逆張りの戦略で勝負を賭ける企業もいくつか現れてきた。その効果の程を考えてみたい。

この「Buy One, Get One Free」はBOGOと略してマクドナルドが以前、よく行っていた。
チキンナゲットを一箱買うと、もう一箱無料というしくみである。ナゲットを一人で二箱平らげる猛者もいるが、これは二人以上の客を狙ったトライアル促進である。ナゲットをよく食べる客が、もう一箱を手に入れて、人に勧めることを狙っているのだ。実質的な半額値引きであるが、単純な値引きによるトライアル促進より遙かに効果が高いだろう。

吉野家も実質値引きとも取れるキャンペーンを展開している。
<吉野家 師走の「くいてえー!」祭り 3杯食べたら1杯無料>
http://www.yoshinoya.com/shop/campaign/index.html
牛丼1杯食べる事にチケットを1枚もらえ、3枚たまると次回の1杯が無料になるとのこと。
「同時に3杯食べればもう1杯無料」はさすがにムリ。なので、3杯食べれば、その次が無料になるというしかけだ。
目的は何だろうか。2008年9月末の国内店舗数においてゼンショーの運営する牛丼チェーン店「すき家」が1,087店となり、吉野家は1,077店を抜き去った。「店舗数だけの話!」と吉野家ファンの声もあるが、チェーン展開において店舗数は一つのチカラの象徴だ。店舗数において劣後すれば、強固な吉野家ファンでなければ、目の前に「すき家」あれば、「まぁ、こっちでもいいか」と思ってしまうだろう。
「くいてー!」は結局、4杯の牛丼を食べることになる。ファンのロイヤルティーをより強固にし、浮気をさせないための施策であることは明らかであり、単なる実質値引きではないと解釈できる。

この経済的な逆風かにおいて、値下げは消費者に大きなインパクトを与える。しかし、そのインパクトを受けるターゲットはどのような人なのか。それはその人にとって、どのように魅力的に映るのか。
価格はマーケティングミックス(4P)の一要素だ。しかし、4Pの前に、ターゲットとそのターゲットにどのように魅力を打ち出すかというポジショニングを考えることは欠かせない。値下げ戦略もその部分の設計がキモなのである。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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