今、冬の京都がアツい。いや、冬の京都は寒いのだが熱い視線を送る観光客が大幅に増えているのだ。それは、JR東海が「そうだ、京都に行こう」と頑張ってキャンペーンを続けてきたから・・・だけではない。寒くて人が呼べないという逆境を武器に替えたそのヒミツとは?
京都の人気スポットといえばどこでしょうか?
<嵐山人気、清水寺に迫る 京の観光地 首位争い白熱 >
http://www.kyoto-np.jp/article.php?mid=P2008113000027&genre=I1&area=K00
地元紙、京都新聞が伝えている。記事の写真はまだ紅葉の頃であるが、熱い戦いは冬にも続く。やはり「アツい」のだ。
<トップの清水寺を、長く2番手に甘んじてきた嵐山が追い上げている。温泉やライトアップなどの魅力づくりに加え(以下略)>と伝えるとおり、京都の集客は大混雑する紅葉の季節にも、さらに集客を伸ばすために工夫が繰り返されてきた。寺社仏閣も拝観時間の延長など協力を惜しまない。
しかし、問題は冬だ。盆地の京都は底冷えがする。「地球温暖化だから大丈夫でしょう」などとナメてはいけない。さむいものは寒いのだ。どうしても不要不急の観光は腰が重くなる。
その観光客を京都全体で魅力を演出し、引っ張ってきているのが今日の成功をもたらしているのである。
前出の嵐山の温泉は<嵐山復活へ2004年に地元旅館が共同で開発した>という。
さらに見事なのは「京都・嵐山花灯路(はなとうろ)」である。<昨年12月に100万人近くを集めた>というから驚きだ。
参道を清掃し、打ち水し、灯籠を灯す。路面に明かりがほんのり反射し、路全体がぼうっと照り映える。竹林の小道にも灯籠が灯る。昼間の深閑とした薄暗い路も、暖かな光に満ちる。その幻想的な雰囲気は、全国の各観光地で行われる絢爛な発光ダイオードのイルミネーションと比べると、いかにも日本の雅な灯りで心和む。
頑張っているのは嵐山だけではないし、その効果は限定的なものではない。<市内観光客数が増えているため、拝観者数は昨年度、過去最高の500万人台に乗った>といい、清水寺は<「嵐山の人気が再び伸びてきたことは京都観光の底上げにつながり、非常に喜ばしい」と余裕をみせている>という。
冬の京都は市内各所で非公開文化財が特別公開されることでも有名だ。普段見られない非公開文化財の特別公開や多彩なイベントが目白押しなのである。
見るだけではない。「食」はどうだ。京都は冬の食べ物が美味しいことでも知られている。いた、特別なものでなくてもいい。メジャーな「湯豆腐」であっても、休みが取りやすいからという理由で訪れる暑い真夏ではなく、本当にあったまる事を実感できる季節に食してこそ、その本当の味わいがわかるというもの。さらに「酒」。人気なのが「冷やおろし」だ。春に誕生した新酒がひと夏を越してよい熟成酒になったこの冬に呑む。166年の歴史を持つ木下酒造に杜氏として迎えられた、フィリップハーパー氏の手による「玉川」。まったりと濃厚な旨味はアツアツの湯豆腐と合わせるならロックでもいける。
おっと、呑み喰いに筆がそれたが、ともかく、冬の京都は街全体で魅力を演出し、寒さで腰の重くなった観光客にアピールし、呼び寄せることに成功しているのだ。小さな心配りもなされている。京都をめぐる人力車。その座席には必ず毛布が用意され、乗客に対する温かさのもてなしを忘れない。
地域活性化や観光振興など、自治体が大きな資金を投じて行っている例は全国に散見される。しかし、誰かが旗を振るだけではダメなのだ。観光資源がある京都ですら、季節的なハンデを克服するため努力を積み重ねている。学ぶものは大きいだろう
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。