「ちょっと、おねえさん、お銚子もう1本!」 地元のそば屋で飲んでた中年のおじさんが、 店の人に声をかけました。 しかし、「おねえさん」と呼ばれたその人は、 推定年齢60歳超、どこからみても「ばばあ」、 いや「おばあさん」、というかシニアな女性です。
よくまあ、正真正銘のおばあさんに、
「おねえさん」と呼びかけられるものです。
私なぞ、まだまだ修行が足りないというか、
心理的抵抗が強すぎて、
「おねえさん」
とは決して口にすることができません。
もちろん、おじさんの言葉はお世辞。
でも、たとえお世辞でも、
「おねえさん」
と呼ばれたそのシニアな女性は悪い気はしないでしょうし、
ひょっとしたら、お酒の量をちょっと多めに入れてくれるかも
しれませんよね。
上記の例の場合、年配の女性が
「おねえさん」と呼ばれてうれしいのは
「まだまだ若いと思ってる自分」
を認められたように感じたからです。
最近、
「こうありたい自分」
に近づいた気分にさせてくれるコミュニケーションが
増えているような気がします。
・メイドカフェで、
男性客を「ご主人さま」と呼ぶこと
・バトラー(執事)カフェで、
女性客を「お嬢様」と呼ぶこと
なども、
客をちょっとした貴族やセレブになった気分を
楽しませるためですよね。
私は、相手の「虚栄心(バニティ)」を
くすぐる上記のようなコミュニケーションのことを
「バニティ・コミュニケーション」
と命名し、研究を深めていこうと思っています。
以前、米国では一般的だという
「バニティ・サイジング」
についての記事を書きました。
これは、女性服(アウターウェア)で多いのですが、
実際のサイズよりも、
サイズ表記(L,M,Sなど)
を小さめにするというもの。
例えば、実寸では「L」サイズなのに、
「M」とサイズ表記するのです。
この業界慣行、米国だけでなく、
日本でもやっているところがあるんですね。
日本では、女性の既製服の場合、
「9号」
が標準サイズです。
ですから、9号より大きめの11号とか13号じゃない
と着れない、
ぽっちゃり女性
は9号を着れるようになるのが夢!
この女性心理につけこむ服飾メーカーは、
実寸で11号や12号の服に9号のラベルをつける。
すると、このブランドの服だと、
「9号がぴったりだわ!」
と女性が喜ぶ。
この結果、お店の売上げが伸びるというわけです。
周囲の女性の方々に聞くと、ブランドによって、
同じ号数なのに実際の大きさが随分違うそうですが、
それは
「バニティ・サイジング」
が採用されているからなんでしょうね。
なお、ブラジャーの場合、
アウターウェアとは逆の表記法になるようです。
・実寸サイズ→バニティ表記
A→B
B→C
C→D
という感じ。
もちろん、「バスト」は社会通念上、
大きいほうがいいということになっているから。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社シャープマインド マーケティング・プロデューサー
これからは、顧客心理の的確な分析・解釈がビジネス成功の鍵を握る。 こう考えて、心理学とマーケティングの融合を目指す「マインドリーディング」を提唱しています。