台湾のASUS(アスース)に続き、デルやヒューレット・パッカード(HP)などの米国大手も参戦し、パソコンにおけるすっかりホットなカテゴリーとなったミニノートPC。ついに富士通が来夏、さらにそれを上回る早さで東芝が10月下旬に国内販売を開始するという。 その両社の意図と効果はどこにあるのだろうか。そして、参入は成功するのだろうか。 低価格ノートの誕生の歴史から現在までを辿りながら考えていこう。
■スペックアップへの対応
サブマシンではなく、1台目マシンとしての使われ方は、スペック不足も顕在化しだした。ASUS社は独特のこだわりで、記憶装置をSSDにしているが、コストの関係で4GBしかない。XPにあらかた容量を取られ、自由になるのは僅か1GB程度。これではさすがに使い勝手が悪い。さらに、サブマシンとしてたまに使うならまだしも、メインで使うなら7インチ液晶は少々辛い。
全てはコストの問題から仕様が限定されていたコトが原因だが、一つには199ドルが制約条件ではなくなっていることが挙げられる。日本円で5万円台という相場は自由度が生まれる。さらに、マニア層のサブマシンでなく、エントリーユーザーのメインマシンというポジションが獲得できれば、裾野が広がり、多くの台数の生産が可能となる。いわゆる、規模の経済が働くのだ。そして、ASUSは大幅にスペックを向上させた901-Xを投入した。
しかし、多のメーカーも黙って見てはいない。冒頭に記した米国大手のデル、HPや、同じ台湾勢のエイサー社も参入してきた。スペックは各社とも8.9インチの液晶を備え、ASUS、デルがSSD、HPとエイサーがHDDと分かれているが、記憶容量も十分だ。その他スペックもヘビーユーザーが使い倒すという状況でない、日常使いなら十分なレベルに引き上げられている。ここに至って今年の夏までに、完全に低価格ノート市場に各機種が勢揃いした感がある。さらに、イーモバイルのキャンペーンは4G-Xを100円に値下げすると共に、上級機群を2万円以下で販売する内容に切り替え、展開。普及に弾みをつけている。
■参入を躊躇していた日本メーカー
低価格ノートが1機種、また1機種と上市される度に、パソコンやインターネット関連の記事に日本メーカーの担当者やアナリストの談話が掲載されていた。「低価格機は儲からない」と。相場価格が多少上昇し、規模の経済が効くレベルまで市場が成長したが、何とか生産してトントンにすることはできるかもしれないが、決して利益の出る市場ではない。厳しいばかりで、おいしくない市場であると。
確かに日本メーカーのパソコンはハイスペックで高価格である。考える限りのスペックと機能を詰め込んでいる。量販店に並んでいるノートパソコンを見てみると、最安値の機種群で13万円弱~15万円強。その上は20万円オーバーに突入する。低価格ノートが何台も買える価格だ。
高い価格で高品質を提供する。マーケティングの価格戦略でいえば、「プレミアム戦略」である。ちなみに、中価格で標準的な品質を提供するのが「中価値戦略」。低価格で低品質なのが「エコノミー戦略」である。この価格と品質が正比例している状態を「バリューライン」と呼び、この価格×品質のライン上にいる状態では、購入者にコストパフォーマンスによる魅力は訴求できない。低価格だが、価値は中程度なのが「グッドバリュー戦略」。さらに低価格で高品質を提供するのが「スーパーバリュー戦略」だ。現在、低価格ノートは「グッドバリュー戦略」のポジションにあると言っていい。
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2008.12.11
2012.01.26
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。