夏真っ盛り。夏休みを利用して海やプールなど水辺のレジャーを楽しむ人も多いだろう。そこで水泳や水遊びに興じている人々の水着に注目してみると、ここ数年でずいぶん変わったことに気付く。デザインの話ではない。機能が進化しているのだ。
何度か紹介しているフレームワーク。その製品がどのような価値を持っているかを<中核><実体><付随機能>に分解し、価値構造を明確にするフィリップ・コトラー製品特性3層モデル。<中核>とは、「顧客が製品やサービスの購入で手に入れたい価値」だ。自動車で考えれば「移動する」や「運搬する」が相当するである。<実体>は「製品の特性を構成する価値」である。自動車ならその車の外装(デザイン)や内装(インテリア)、エンジン性能や安全装備に相当する。<付随機能>は「製品の中核価値に直接的な影響は及ぼさないが、その存在によってより魅力が高まる価値」である。車だと低金利ローンや無料点検サービス、納車までの期間の短さなどが相当する。このように分解して構造を知ることによって、自らが顧客に提供している価値を明確にすることができる。
では、水着の場合はどうだろうか。水着とは辞書によれば「水泳の時に着るもの」である。着衣で水泳をすると水の抵抗があって泳げない。しかし、裸はマズイ。故に、「水泳の妨げにならずに身体を隠せる」ということが水着の<中核>である。
さて、水着というと、特に婦人物において、毎年様々なデザインを施した商品が発売される。デザインは<実体>に属する。男性用も実は地味ながら流行の変化がある。古くはピッタリとした半ズボンタイプが主流であったが、その後、サーファータイプの膝上丈でだぶっとしたものが流行った。ここ数年、特に今年は競泳競技に注目が集まったことから、太ももにピッタリと密着するタイプが流行っている。
次に<付随機能>は、例えば「UVカットで色あせにくい」などがあげられるが、実際には水着において付随機能自体は、あまり大きな要素とはなっていなかったように思われる。
さて、水着自体はあまり付随機能の要素は進化していないが、同時に着用するウェアがそれを補っているようだ。「ラッシュガード」というものを着用する人が増えている。
ラッシュガードは元々はサーフィン、ジェットスキーなどマリンスポーツのウェアで、体温の保持、紫外線による日焼け防止、スリ傷防止などを目的として着用する長袖(半袖もあり)のピッタリしたカットソーやTシャツのようなものだ。スパッツ状の下半身用もある。筆者も数年前から愛用している。
「泳ぎにくいのでは」と思うかもしれないが、身体にフィットするためそんなことはない。また、日焼け止めをベタベタ塗る必要もなく、水の中や外に出てからも体温が下がりすぎない。海でシュノーケリングをしている時なども、岩やサンゴで擦り傷を作る心配もない。
水着を覆い隠してしまうので、泳いでいる時は<実体>である水着のデザインがスポイルされてしまうのは否めないが、実に快適なのだ。水着のデザイン以前に、筆者を含め、体型の問題などにより、身体をあまり露出したくない事情のある人にも向いている。また、子供向けには体温保持という効用は大変ありがたいものだ。
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2008.12.03
2009.09.10
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。