最近、この本のヒットのせいか、地頭という言葉が一般にも普及しました。私も、面接の時に、「テニスラケットは日本に何本あると思いますか?」と聞かれたことがあります。コンサルタントであれば、いわゆる地頭を使った、こういう思考スタイルは取らざるを得ないのですが、一般企業でどう活用するか?に関して、私は相当に苦労しました・・・。
まず、本書のサマリーっぽいものは・・・
「頭のよさ」には3種類ある。「物知り」、「機転が利く」、「地頭がいい」の3種類である。「物知り」は記憶力がある、知識が豊富である、といった頭の良さで、具体的には「クイズ王」のような人。「機転が利く」は論理を超えた対人感受性に支えられ、空気が読めて、瞬時に対応ができる。具体的には、いわゆるコメディアンや司会者のような人。「地頭がいい」が思考力がある人。数学者やプロ棋士のような考える力のある人である。
旧来のビジネス界では、「物知り」で、「機転が利く」という人が、評価された感がある。だから、履歴書を見れば、この2つの能力は大概分かるのだが、面接でしか確認できない、しかも今後のビジネス界で重視される知的生産能力を見るために必要なのが、「地頭力」であり、この「地頭力」を測定するための質問が「フェルミ推計」である。
「地頭力」は、論理的思考力、直観力、知的好奇心といったベースに支えられた、3つの思考力によって支えられる力であり、その3つとは、結論から考える「仮説思考」、全体から考える「フレームワーク思考」、単純に考える「抽象化思考」である。この3つの思考力を使いこなせれば、圧倒的に知的生産性が上がる。実はこの考え方は、短い時間で会社全体のことを意思決定しなくてはいけない経営者の発想そのものなのだ。
この地頭力を測る「フェルミ推定」は物理学者フェルミが、好んで用いたためにその名がついた、地頭力を測るのにいい考え方である。フェルミ推定は、「つかみどころのない物理量を短時間で概算すること」であり、具体的には「日本に電柱は何本あるか?」「琵琶湖は水滴にすると何滴なのか?」などの質問をして、答えの正しさよりは、答えを出すプロセスを見ることによって、地頭力を測ることができるアプローチである。
面接時に、考えたこともないような質問をされると、たいていの人は手持ちの情報量ではたりないと思うが、どんなに少ない情報量でも仮説をたてようとする「仮説思考」の力を図ることができる。そして、答えにたどり着くための道筋をどう組み立てるのか?を見ていれば、「フレームワーク思考」の力がわかる。そして、短時間で答えを出すので、クリティカルなポイントだけを抽出し、計算しなければ間に合わない。そこを見ていれば「抽象化思考」の力がわかる。だから、地頭力を見るのに、フェルミ推定の質問をするのは、適切に面接者の力を見る、という点で優れているのである。
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2008.06.28
2008.12.06
THOUGHT&INSIGHT株式会社 代表取締役
THOUGHT&INSIGHT株式会社、代表取締役。認定エグゼクティブコーチ。東京大学文学部卒。コンサルティング会社、専門商社、大学教員などを経て現職。