年末年始やお盆休み期間になると、ホテルや飛行機、旅行などの価格は、平常価格よりぐんと高くなり、一方の閑散期は平常価格よりお得な設定になる。 このように、供給量や期日が決まっているサービス業などでは、商品の中味は同じであっても、需要と供給バランスに応じて価格を変動させることがある。 この仕組みをダイナミックプライシングというが、昨今ではダイナミックプライシングのあり方が大きく変わり、サービス業に限らず、日用品などの一般消費財を取り扱う量販店などでも普及しはじめていることをご存じだろうか。 最新のダイナミックプライシングのカギは、AIを駆使した電子タグの導入ということだが、いったいサービス業の現場でいま何が起こっているのか。私たち消費者にどのような影響がおよぶのかを探ってみた。
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米国のメジャーリーグが生み出したダイナミックプライシング
1980年代後半、ガラガラのスタンドをどうやって埋めるか……という問題を抱えていた米国のメジャーリーグ。あれこれ試行錯誤を重ねた末、対策としてひねり出されたのが、対戦カードや試合日程、過去の天気などによって、スタンド席の価格を変動させるという商法だ。
これがまんまとあたり、球場のスタンド席が多くの客で賑わうようになったことは有名な話だが、それ以後、ホテルや旅行、コンサート会場など、ある程度の供給量が決まっているサービス業で、市場の需要によって価格を変動させる商法が広がり始め、その仕組みをダイナミックプライシング(Dynamic Pricing)と称するようになった。
簡単な例を挙げると、航空機やイベントでは空席のまま期日を迎えれば完全な損失に陥るので、ダンピングしてでも席を埋めたほうがベターであり、その分、儲かるタイミングで挽回すればいい……という考え方が従来のダイナミックプライシングだった。
このダイナミックプライシングが最近になって、供給・需要量・期限が定まっているわけではない家電などの一般小売量販店にも普及し始めている。これを可能にしたのが、ビッグデータを駆使したAI(人工知能)と、高性能の電子タグを組み合わせたシステムだ。
瞬時に価格が変わる電子タグを、ノジマとビックカメラが導入
今年の10月下旬、家電量販店のノジマが、全国184店舗でダイナミックプライシングを導入したと発表した。
ノジマは今回の導入によって、店頭の棚の価格表示をすべて電子タグに置き換え、本部から一括で店頭価格をコントロールできるシステムを完備。この新システムはPOSデータと連動させ、売れ筋や在庫状況、競合店やネット通販の価格などを総合的に分析し、そこから算出した価格を本部から遠隔操作で商品棚の電子タグに反映させるというもの。
同様にビッグカメラも41の直営店で電子タグを導入し、需給に応じて店頭価格を頻繁に変動させるシステムを稼働させるという。
これは、今年2月に開店したばかりの東京町田店において、家電製品など約10万点に電子タグを設置し、その効果を検証した結果によるものであり、費用対効果が見込めると判断したことで決断に至ったようだ。
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