国連の発表によると、世界の人口は毎年約8300万人ずつ増え続けており、2050年には98億人に達すると予測されている。 このペースで人口が増え続けると、近い将来、食肉の生産が追いつかなくなり、重要なタンパク源の肉が食べられなくなる「タンパク質危機」が起きる可能性もあるという。 そうした中、いま国内外で急成長しているのが、食品に関わる課題を先端技術で解決する「フードテック」と呼ばれる産業分野だ。2015年ごろからフードテックへの投資やクラウドファンディングが活発化したのを受け、国内でも関連分野のベンチャーやスタートアップ企業が、肉類に替わる新たなタンパク源の研究・開発に乗り出している。 肉不足の救世主として注目されているのは、果たしてどんな「食べ物」なのか……。テクノロジーの力で将来のタンパク質危機に挑む、日本のフードテック企業の取り組みを2回シリーズで紹介する。
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人口増・肉の需要増で、家畜の穀物飼料の生産が限界に!?
まず、肉不足による「タンパク質危機」が懸念される背景について説明しておこう。
先述した通り、その一大要因とされるのが世界的な人口増加である。2011年時点で70億人だった世界人口は、2018年に76億人に達し、2030年には88億人、2050年には98億人にまで増加するとみられている。逆に人口減少が懸念される日本に住んでいると、あまりピンとこない話かもしれないが、ここはしっかりと押さえておくべきだろう。
さらに、現代人の食生活の変化も大きく関係している。ここ近年、アジアを中心とした途上国では経済成長に伴って肉食が普及し、その消費量が年々拡大。農林水産政策研究所の試算では、2026年の世界の肉類消費量は、牛肉・豚肉が18%、鶏肉が27%増加するという(2013~2015年の平均値比)。
とはいえ、増え続ける人口と需要に見合うだけの食肉を、永続的に増産することは容易ではない。食用家畜の飼育には、その飼料として大量の穀物が必要となるからだ。
世界の食糧問題に取り組む国連機関「FAO(国連食糧農業機構)」によると、牛肉1キロの生産には8キロもの穀物飼料を要するという。今のところはどうにか賄えても、穀物の生産率向上や森林伐採による農地の拡大には限度があるため、このままでは飼料の生産が需要に追いつかなくなる恐れがある。となれば、世界中で肉類(=タンパク源)が不足する、タンパク質危機が起きるかもしれないというわけだ。
肉に替わるタンパク源として脚光を浴びる「昆虫食」
そこで今、肉類に頼らない新たなタンパク源として脚光を浴びているのが「昆虫」だ。
実際にアジア・アフリカ・南米などの一部地域では、古くから昆虫を食べる習慣があり、味の良さから高値で取り引きされる昆虫もあるという。とはいえ、肉・魚が中心の現代の食生活から見れば、昆虫食はかなりマイナーな存在といえるだろう。見た目のインパクトから「ゲテモノ扱い」されることも多い。
そんな昆虫食が、いま改めて注目される理由、それは畜産・漁業よりも「極めてエコロジー」なことである。じつは、地球上には食べられる昆虫が1900種類以上存在し、その利用価値・メリットはかなり大きい(図表参照)。FAOでも将来のタンパク質危機を回避する有効なアプローチとして、昆虫を食材や飼料に活用することを推奨している。
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