都会で働くビジネスパーソンにとって、毎日の通勤はひとつの試練といえるかもしれない。 朝も夜もすし詰めの満員電車に長時間揺られて、心身ともにクタクタ&ヘロヘロ……まさに「痛勤」である。 そんな通勤ラッシュの苦痛を解消してくれるのが、首都圏を中心に鉄道各社で導入が進む「有料着席サービス」だ。定期券に数百円の追加料金を払えば、ゆったり座って乗車できるので、通勤客からの評判は上々。時間帯によっては、連日ほぼ満席になるほどの人気ぶりという。通勤電車の混雑緩和が足踏みする中、各社は最新型の特急車両を投入するなど、快適さを競ってサービスの拡充に力を入れているようだ。 そこで今回は、年々激化する有料着席サービス競争の背景と、首都圏の大手鉄道各社の動きにフォーカスする。
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座れる通勤電車のパイオニア、小田急電鉄「ロマンスカー」
全席指定制・座席定員制を導入した「座れる通勤電車」の歴史は意外に古く、その先駆けとされるのが小田急電鉄の「ロマンスカー」だ。東京都心と箱根を結ぶ観光特急というイメージがあるが、じつは1967年から沿線住民の通勤電車としても広く利用されている。
ここ近年は、朝晩のラッシュ時に運行する「モーニングウェイ・ホームウェイ」や、東京メトロ直通の「メトロモーニングウェイ・メトロホームウェイ」など、通勤向けのロマンスカーも投入。レジャーユースだけでなく、ビジネスユースへの対応も強化している。
また1984年には、JR東日本の前身である日本国有鉄道(国鉄)が、都心のターミナル駅と近隣県のベッドタウンを結ぶ座席定員制の特急列車「ホームライナー」の運行をスタート。これが通勤客に好評を博して導入路線が増えたことで、朝晩を中心に運行する有料着席列車=「通勤ライナー」の呼称が一般化。最近ではJRだけでなく、私鉄各社で運行する同様の通勤快速などにも「◎◎ライナー」の愛称が用いられるようになった。
近年、次々とサービスに乗り出す首都圏の私鉄各社
JRの通勤ライナーや小田急ロマンスカーの流れを受け、近年では東武鉄道が2008年に「TJライナー」を東上線に導入。沿線の通勤客の間でたちまち人気となり、これをきっかけに首都圏の私鉄各社で有料着席サービスに乗り出す動きが活発化。その後、東武鉄道では2017年のダイヤ改正で、伊勢崎線・野田線へ乗り入れる「スカイツリーライナー・アーバンパークライナー」2系統の運行も開始している。
同じく西武鉄道でも2017年、埼玉方面から東京メトロ有楽町線に直結する「Sトレイン」の運行を開始。続く2018年には西武新宿線~拝島線に「拝島ライナー」、2019年3月には、約25年ぶりに開発した新型特急車両「Laview(ラビュー)」を西武池袋線~秩父線に投入した。西武の特急は秩父方面への観光輸送が主力だが、ラビューは車内Wi-Fiや各座席に電源コンセントを設けるなど、ビジネスユースも意識した設計となっている。
対する京王電鉄では、2018年から夜間の新宿駅発下り線で「京王ライナー」の運行をスタート。導入直後から平均乗車率が8割超と好調だったことから、2019年2月のダイヤ改正で朝の上り線でも運行を始め、上下線ともにリピーターが続出しているという。
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2015.07.17
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