神社やお寺を訪ね、参拝の証としていただく御朱印。10年ほど前からブームとなって、朱印帳を持参して有名無名の寺社の御朱印を収集する人が増えている。 ところが最近になって、度を超すとでもいうべきマニアが増え始め、各地の寺社で弊害が起きているようだ。特にこのたびの改元フィーバーでは、各寺社から力の入った希少な御朱印が配布されたことから、取り合いの騒動となったところも現れた。早速、その実態をみてみよう。
浅草神社の場合
浅草神社(東京)では、改元前後の4月27日~5月6日に数量限定で、「平成」と「令和」の両方の元号がはいった御朱印を配布したが、想定の3倍を超える約3000人が殺到。入手できなかった人の中には神社の職員や巫女に暴言を吐いたり、職員を取り囲んで罵声を浴びせたりする人まで現れた。
こうした異常事態を受けて、浅草神社では、そのあとに開催される「三社祭り」で配布予定だった毎年恒例の特別な御朱印の配布を、今年はとりやめた。楽しみにしていたファンからは、一部のマナー違反者のおかげで、大事な御朱印の配布がなくなった、と残念な声がでたという。
会津若松飯盛山の場合
白虎隊の墓があることで知られる会津若松の飯盛山(福島県)では、100年以上にわたって直筆での御朱印の授与を行ってきていたが、5代目墓守で書家の飯盛尚子さんに対して「筆が遅い」などのクレームが相次いだため、いったん中止。
今回の改元を機に予約制で再開したのだが、今度は「予約なら郵送してほしい」「ホテルまで届けてほしい」など、信じられない要求が届いたことから、結局は直筆御朱印は取りやめたという。
到津八幡神社の場合
福岡県北九州市の到津(いとうづ)八幡神社では、公式ツイッターで御朱印の配布は一人に1枚と告知したところ、特別御朱印が欲しいために、すでに手に入れていた通常の御朱印を、これはいらないと神社の境内でページを引きちぎって、新たに手に入れようとする人が現れたという。信仰の表れとはほど遠いと、関係者は怒っている。
そのほか、令和ゆかりの地とされる福岡県太宰府市内の坂本八幡宮でも5月初めは境内に人があふれ、その日のうちに頒布価格の数倍もの金額で、フリマアプリに次々と売りに出された。
ちなみにフィギュアスケートの羽生結弦選手など有名アスリートが必勝祈願することで知られる仙台市の大崎八幡宮の御朱印も、改元当時フリーマーケットに多数売り出されていた。
寺社にとって実は貴重な収入源となっている現実
上にあげたような御朱印ブームによる弊害の例はまだまだたくさんある。とくに今年の改元フィーバーはブームの過熱に拍車をかけた。騒ぎの当事者となったお寺や神社はそれぞれ頭を痛め、まるでスタンプラリーのような感覚で参拝もせずに御朱印だけを集めたりすることや、あるいは法律違反ではなくても、すぐに転売するような行為はやめてほしいと訴えている。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.17
2009.10.31