「〇〇家の墓」と墓誌が掘られた家墓に手を合わせる──。それが日本の伝統的なお墓参りだが、いま、そのスタイルが急速に崩れつつあるようだ。 お墓を引き継ぐ方がいなくなったことで「家墓」と「檀家制度」が旧来の様式となり、ひとつのお墓に多くの人が共同で埋葬される「合葬墓」「集合墓」や「樹木葬」「海洋散骨」など散骨方法も変化しているほか、棚型やロッカー型の「納骨堂」も増えてきている。 少子高齢化に拍車がかかり、墓守をする人がいなくなったり、また身寄りのない単身世帯の増加など、家族形態が大きく変化するに伴って、お墓の形も変わってきているようだが、今回は誰にとっても他人事ではない、現代のお墓事情をルポしてみよう。
もうひとつ大切な特徴のひとつが、お墓の継承を考える必要がないという点だ。一般のお墓だと、たとえば子どもや親類縁者がお墓を管理するのが普通で、それが途絶えたりすると、墓は荒れ地となり、最悪の場合、無縁墓となる可能性もある。
仮に子どもがいたとしても、それが女性でお嫁にいってしまったケースなどでは、夫婦のお墓を守ってくれる人がいなくなる不安もある。そうした人たちには、この合同墓は非常に有効な埋葬の形といえる。
合同墓のメリット
こうした特徴を持つ「合同墓」。そのメリットをまとめてみると、次のような点があげられる。
●圧倒的に安く、お墓ができる
上の表にも示した通り、初期費用は一般墓の墓石と比べると約3分の1程度。しかも多くの霊園で管理費は不要というケースが多い。一般墓なら、毎年管理費をお寺や霊園に収めるのが普通だ。
合同墓に申し込みにくる人は、自分が生きている間にお墓を決めてしまおうという生前申し込みが圧倒的に多い。子どもに迷惑をかけたくない、あるいはお墓を作ってくれる人の見込みが立たない、といった人たちは、比較的手軽に格安にお墓を用意することができる合同墓を利用しようという人が多いのだ。
●宗教宗派を問わない場合が多い
日本の多くのお墓は、寺院の檀家となり、そこの管轄する墓地に埋葬されるケースが多い。しかし、合同墓の場合、こうした宗教、宗派に問わられることは少ない。日本人は仏教の形式で埋葬することが多いが、キリスト教やイスラム教、神道のスタイルで埋葬することもできる。
記事冒頭に記した築地本願寺の場合は、生前に信仰してきた宗派は問わないが、「築地本願寺倶楽部」に入会してもらい、以後の法要や読経などは浄土真宗本願寺派の儀礼様式で行うことになっており、そのことを事前に了承しておかなければならない。
ただし、こうした築地本願寺流の合同墓は、むしろ例外で、埋葬後も引き続き生前の信仰を続けられることのほうが多い。
合同墓のデメリット
一方で、見逃してはならない合同墓のデメリットも報告しておこう。
●遺骨を取り出せないのが普通
いったん納骨した遺骨は、合同墓ではもう取り出せないことが普通だ。遺骨の安置は、最初のうちは骨壺のまま置かれたり、あるいは簡易な袋などに収められて他人と区別される場合もあるが、それも一定期間までで、最終的には他人のお骨と混ざり合って、埋葬されることが多い。
それは非常に大事な要素で、合同墓に決めるときには、その取り出せないということをしっかり認識して申し込む必要がある。もし、今後独自のお墓に改葬する可能性がある場合は、合同墓は最初から候補にのせないほうがいい。
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