缶詰は、昭和の時代からもっとも手軽な食卓の友として定番だが、その売れ行きは平成が終わろうとしているいまなお衰えることがない。 とりわけもっとも古い歴史をもつ缶詰のひとつサバ缶は、動脈硬化の予防につながるEPA、DHAをはじめ、健康にいい成分がたくさん含まれていることから、サバ缶を使ったアレンジ料理が大手料理サイトなどに多数アップされ、その低価格もあいまってここ数年バカ売れ状態が続いている。 でもなぜ、こんなにもブームが続くのか。多くの人が支持する大ヒットの理由をひも解いてみた。
マルハニチロは半期で34%増の生産
サバ缶人気が止まらない。
今年5月、テレビや新聞各紙が「ついにサバ缶がツナ缶を逆転!」のニュースを報じた。缶詰の業界では、マグロ原料のツナ缶が長年トップに君臨していたのが、まず生産量で、ここ数年でサバ缶がじりじり追い続け、ついに逆転。昨年から大差をつけてリードを始めた。
その流れは販売数量にも直結。缶詰業界の調査によれば、2017年10月~18年3月の魚介缶詰の売上高は全体で400億円前後だが、サバ缶の売り上げシェアは2割から3割へと大幅にアップして、マグロのツナ缶を抜いた。たとえばマルハニチロの18年1~6月までの売り上げ実績は前年同期比の34%増にまでなっている。恐るべし、サバ缶人気だ。
この人気沸騰を受けて、缶詰メーカー各社はそろって増産体制に乗り出している。ニッスイ(日本水産)は今後の売れ行きを見越して、生産量を16年度の2.5倍に増やす見通し。(株)極洋も、製造委託工場の生産ラインの大幅拡充を検討しているという。
女性中心の健康志向がブームを支える
この空前のサバ缶ブーム。いったいなぜなのだろうか。
振り返ってみると、最初の大きなきっかけは、2013年の夏にテレビの健康番組で、「サバ缶を食べるとやせる」という特集が組まれたこと。
有名な消化器の専門医師がサバ缶を食べると腸内からやせるホルモンが分泌されると、ダイエット効果をうたったところ、翌日からスーパーに女性客が押し寄せ、サバ缶の棚がのきなみ空っぽになる騒ぎになった。
小売店からの問い合わせに驚いたマルハニチロなどのメーカーは急いで増産に走ったが、もともとサバ漁の時期は終わっており、増産するにも限度があって、消費者や流通業者から苦情を受ける羽目になった。
サバ缶によるダイエットブームはすぐに収まると思われたが、意外にもなかなか売れ行きは落ちなかった。というのも、そのブームのさなか、さば缶にはダイエットだけでなく、ほかにもさまざまなメリットがあることが知れ渡っていったのだ。
もっとも大きなメリットは、その健康効果。サバ缶には血液をサラサラにする効果があり、コレステロールの増加を防ぎ、動脈硬化の防止にもつながることがわかってきた。
そのほか、リーズナブルなわりに意外においしい、手軽、あきない、酒のつまみに最適など、さまざまなメリットがうたわれ、サバ缶は売れ続けた。
そうした売れ行き高止まりのさなか、昨年秋、またテレビの人気バラエティ番組がサバ缶を特集。健康効果などとともに、おいしい調理法などをあらためて紹介したことで、再びスーパーの棚からサバ缶が消える現象が生まれた。今回はメーカーの対応も迅速で、どんどん増産して、なるべく消費者に迷惑をかけないように対応。おかげで、メーカーも小売店も、大幅な売り上げアップとなっている。
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