日本がエネルギー自給国になる未来 PEST分析から読む近未来vol.8

2015.12.11

営業・マーケティング

日本がエネルギー自給国になる未来 PEST分析から読む近未来vol.8

竹林 篤実
コミュニケーション研究所 代表

<PEST分析のT> COP21がパリで開催されている。地球温暖化は、少なくとも科学者の間では既定事実である。だからこそ、立場の違いこそあれ各国政府が、温度上昇「2℃」を共通目標として議論を戦わせている。日本は2030年には、2013年度比で温室効果ガスを26%削減する。現状をベースに考えるとかなり厳しい数字だが、意外に実現可能かもしれない。しかも、エネルギー自給自足を達成しながらである。


エネルギー最貧国日本の挑戦
テスラ・モーターズのクルマは、日本でも買うことができる。けれども、今のところイーロン・マスクが、日本にも充電スタンドを用意してくれる様子はない。では、石油が枯渇に向かう中、原子力に頼ることも難しい日本は、この先どうやってエネルギーを賄えばよいのだろうか。
お先真っ暗、ではなくなる可能性が見えている。そのカギとなるのが「次世代エネルギーマネジメントシステム(EMS)」だ。これは電力の需要側と供給側をスマートグリッドで結ぶことで、電気の全体最適を実現するもの。
需要側では、電力消費の徹底したスマート化を図ることで消費量を抑える。
電力消費のスマート化とは、電気を使う機器を通信によってつないで動かすことで、極力無駄を省くことだ。機器同士の接続は「エコーネットライト」と呼ばれるプロトコルにより、既に実現しつつある。消費を最適化するプログラムも、現在、早稲田大学を中心とするプロジェクトで開発中。近いうちに実現する可能性が高い。
供給側では、太陽光発電の高効率化が期待できる。技術革新により発電効率が高まれば、大規模太陽光発電はもちろんのこと、家庭での発電量も増える。そうなると、世帯単位で電気の自給自足が実現する可能性が出てくる。このシステムではバッテリーが重要な役割を担う。昼間発電した電気を貯めておくことで有効活用する、その役割を担うのが電気自動車だ。
さらに技術開発が進めば、電気を水素化して貯めておくことも考えられる。この場合のキーテクノロジーは水素吸蔵合金である。これが実用化されれば、巨大でリスクのある水素タンクを使うことなく、水素を省スペースで大量に貯蔵することができる。


エネルギー技術が日本の輸出を支える
技術の進歩はめざましい。太陽光発電を例に取るなら、1990年での設備コストは1kwあたり600万円だった。これが今では30分の1の20万円にまで下がっている。つい最近、チリで100万kw級の発電所新設の競争入札が行われた。火力発電と太陽光発電が競い合った結果、コストパフォーマンスの高さで太陽光が勝っている。発電効率は今後も高まる可能性、つまり発電コストが下がる可能性を大いに期待できる。有機ELをパネルに使う最先端研究も進められている。
一方で、需要をきめ細かく調整するEMSが実用化すれば、電力消費の無駄を徹底的に抑えることができるだろう。電気エネルギーの「貯めることが難しい」欠点も、バッテリーの進化(リチウム電池の次にはナトリウム電池に期待がかかる)や、電気を水素に替えて貯蔵するシステムの開発により補える可能性が高い。
これらはすべて国内で研究開発が進められている技術であり、実用化できれば、これこそがこれからの日本の輸出品となる。日本がエネルギー自給国となり、エネルギー関連技術の輸出がこれからの日本を支える可能性は意外に高いのだ。

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