「Fit’s」に見る、ロッテのブレないリーダー戦略

2010.05.07

営業・マーケティング

「Fit’s」に見る、ロッテのブレないリーダー戦略

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

 ロッテのガム「Fit’s」にまた、ニューフレーバーが登場した。しかし、今回は単なるフレーバーの追加ではない。それは、ガム市場のシェア6割ともいわれる圧倒的なリーダーであるロッテが「Fit’s」で切り開く戦略の第3章を意味しているのだ。

 筆者は、若者への「ガムのトレーニング」であると見た。
 ガム市場のリーダーであるロッテにとって、ガム人口の減少は大きなダメージとなる。それに対応した「Fit’s」だ。楽しいダンスでAttentionを獲得して、ダンスコンテストで口コミで流行らせ、ガム離れに歯止めをかけることに成功した。次は、使用回数を向上させることだ。
 ガム市場のピークは2004年であり、その牽引役となったのは「ボトルガム」だ。今もデスクにガムのボトルが乗っている人も多いだろう。ガムで最も習慣的に食べられるのは、刺激のある「ミント系」なのだ。果実系ではない。
つまり、ロッテは「Fit’s」でミントの刺激に徐々に慣れさせ、さらに噛み心地も堅くしていき、他商品も含めて使用頻度を高めるという狙いに移行していると考えられるのである。

 では、なぜ、ターゲットを30代男性としたのか。それは恐らく2つの狙いがある。
 1つは、すっかり有名になった「Fit’s」ブランドを使って、コアユーザー層をさらに獲得する意図だ。コアユーザー層は、過半を抑えたリーダー企業とはいえ、まだ競合との獲得競争が続いている。
 もう1つは、「保険」だろう。あまり大きなポジショニングチェンジをすると、既存ユーザー層の離反を招く。あくまで、「Fit’s」は「フニャン」であり、優しい果実系の味わいが中心なのだ。それを、ガムの王道である刺激ミント系をガッツリ出しては、整合性がとれなくなる。あくまで派生ブランドとし、ターゲットも違うという打ち出し方をして、従来のユーザーには「興味があれば、どうぞ…」的な展開を装っているのだ。

 以上のような読みが当たったとしたら、「Fit’s LINK」はしばらくしたら「Fit’s」ブランドに統合されるかもしれない。もしくは、そのまま存続だとすれば、もっと刺激を強めたフレーバーが「Fit’s」に加わるかもしれない。
 いかに需要を確保し、それを高めていくかという、業界リーダーの戦略がどうなっていくのか、またしばらくは目が離せない。

 

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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