日経MJヒット商品番付2009の西前頭4枚目にも列せられた資生堂の「UNO FOG BAR(フォグバー)」。その大ヒットで男性整髪料シェアトップであったマンダムの座を追い落としたのは記憶に新しい。その雪辱のため、2月22日にマンダムの「ギャッツビー クイックムービングミスト」を市場に投入した。しかし、その思惑は実は微妙な感じもするのである。
資生堂とマンダムのスタイル提案の違いは、あくまで両者のポジションの違いによるものかもしれないが、マンダムがワックス主体の従来路線を変更し、ミスト製品を上市したのは商機を見いだしたからなのは間違いない。
恐らくそれは、FOG BARユーザーの中にもニーズギャップを持った層が存在することを見越してのことだろう。「ナチュラルもいいけど、やっぱりもう少し、髪をしっかりホールドしたい」というニーズだ。
クイックムービングミストの3種の中でも整髪力が強い「クラッシュムーブ」を試してみた。FOG BARの一番強い「がっちりアクティブ」よりも明らかに整髪力が強く、髪をしっかり立ち上げて動きを出すことができた。
さて、そう考えると、「ギャッツビー クイックムービングミスト」は、「UNO FOG BAR」ユーザーのうち、「整髪力」「動き」に不満のある層をごっそり奪って、シェアもだいぶ奪還することができることになる。ヘアワックスのニーズギャップ対応で成功したFOG BARに対して、そのFOG BARに対するニーズギャップ対応で巻き返しを図るという、なかなか痛快な展開である。
だが、一つだけ不安がある。
「クイックムービングミスト」は使い心地がいいのだ。非常によい。整髪力がしっかりあるのに、サラサラとしていて、使用後や洗髪の面倒さもない。その点、全くFOG BARと比肩する。
実は、筆者はFOG BARはスーツスタイルなどナチュラルな髪型が合うときに使い、ギャッツビーのヘアワックス「ムービングラバー」をカジュアルなスタイルで少し遊びたいときに使い分けている。つまり、ギャッツビーにとっては、FOG BARのユーザーを奪取するのではなく、自社のワックスユーザーをミスト乗り換えさせてしまうカニバリゼーション(共食い)が起きているのだ。
筆者のようなパターンがどの程度いるかわからない。しかし、新製品を出すと、少なからず自社商品に対する影響も免れない。自社商品をさらに買い増してくれるのであれば問題ないが、カニバリがどの程度起きるかは留意したいところである。
今後、「FOG BAR」対「クイックムービングミスト」対「ムービングラバー」の三つ巴も予想される。しばらくは要チェックである。
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2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。