「巣ごもり需要」を狙って森永乳業・エスキモーアイスが大攻勢をかけている。
MOW、パルム両商品の大ヒットのヒミツは「美味しいこと」だ。「当り前だ!」と言うなかれ。明らかに価格を上回るおいしさなのだ。MOWは1個120円。パルムの個包装版も120円。6個パックは380円である。それでいて、プレミアムアイス並の味わいを実現している。つまり、「バリューライン」を超えているのである。
横軸に製品・サービスの「価格」、縦軸に「価値」の二軸を取った時、通常は正比例する関係となる。それが「バリューライン」だ。競合価格戦略上、優位に立とうとするなら、そのラインを超える。つまり、価格を上回る価値を実現することが必要だ。低価格にも関わらず、品質が高く、機能性に優れた商品で快進撃を続ける「ユニクロ」もバリューラインを超えたプレイヤーである。
もう一つ、森永乳業にはヒミツがある。バリューラインを超えた、「通常の価格でプレミアムアイス並み」の商品を展開できるのは、同社には「ハーゲンダッツ」やロッテ「レディーボーデン」、明治乳業「Aya」のようなプレミアムアイスが存在していないのだ。自社にプレミアム商品があれば、カニバリ(共食い)を起こすため大胆にバリューラインを超えるような展開はできない。
プレミアムブランドを持っていない弱みを、長引く不況で財布の紐が固くなった消費者の姿と、巣ごもり需要に対応して、一気に攻勢をかけて強みに転換しているのである。
冷たくて美味しいアイスクリーム市場で展開されるホットな戦い。同社のクールな戦略にはこれからも注目したい。
続きは会員限定です。無料の読者会員に登録すると続きをお読みいただけます。
- 会員登録 (無料)
- ログインはこちら
関連記事
2015.07.10
2015.07.24
有限会社金森マーケティング事務所 取締役
コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。