マクドナルドの戦略 と モスバーガーのこれから

2008.11.18

営業・マーケティング

マクドナルドの戦略 と モスバーガーのこれから

金森 努
有限会社金森マーケティング事務所 取締役

表参道のクォーターパウンダーに行ってみた。12時少し前であったが、オープン当初、報道にあったほどの行列はなかった。

筆者を含め、クア・アイナには根強いファンがいるのでマクドナルドと同列に並べられることを潔しとしないかもしれないが、あえてここでマクドナルドの価格戦略に注目してみたい。「クォーターパウンダー」が一般店で単品で発売される際には「ダブル」で400円前後になるという。
同じ土俵で比べるのはムリがあるかもしれないが、「海外で販売されている本格バーガー」というポジショニングの商品としては破格だろう。

実はこの戦い方はマクドナルドならではの「コストリーダー」の戦い方の典型だといえる。
コストリーダーは「高級バーガー」というような狭いカテゴリーで戦うことはしない。広い市場でコスト、つまり圧倒的な調達力を武器に戦う。
そして、リーダーの戦い方の得意技は「同質化」である。市場の中の目立った競合と同じような商品を上市し、圧倒的な販売力で競合の存在をかき消してしまうやり方だ。
さすがに、「高級バーガー」と言い切ることはしないし、全ての競合を消し去ることはできないが、消費者には「この値段でそこそこなら、まあいいか」と思わせてしまう効果はあるだろう。
つまり、今回の「クォーターパウンダー」はコストリーダーたる、マクドナルドらしい戦い方であると考えることができるのだ。100円マックや100円プレミアムコーヒーなど、低価格メニューの提供をしつつ、こうした同社としての高単価メニューを導入することによって、マージンミックスをうまく図っているのである。

対して、非常に心配な存在がハンバーガー市場にはある。
「モスバーガー」だ。

<売り上げが落ち込むモスバーガー、次なる一手は?>
http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0811/12/news037.html

最終損益が2期連続の赤字となった同社。<モスフードサービスの櫻田厚社長は決算会見の席上、200円前後の低価格メニューの開発を進めていることを明らかにした>という。

モスバーガーも多くのファンを持っているが、その中からも味の低下、サービスの低下を嘆く声が高まっていた。そうした中、後発の「フレッシュネスバーガー」が模倣戦略に近い戦い方で追い上げて、現在は同社の方が勢いが良く思える。
その中で、あえて「低価格メニュー」に軸足を移すと、さらにファンの流出を招くことになる恐れが高いように思えるのだ。
コストを武器に戦えるコストリーダーは業界にただ1社しか存在できない。
先のリンク先の記事では<深刻な外食不況のなかで、快走を続けるのは日本マクドナルドやサイゼリヤなど、低価格を前面に打ち出した業態だ>と分析しているが、マクドナルド同様、サイゼリアも圧倒的な調達力を持つ「コストリーダー」である。

モスバーガーはやはり、ハンバーガー市場においてはマクドナルド、ロッテリアなどの大手に対するニッチャーとしての戦略に本来の強みがあったのだ。できたてにこだわり、ファストフードであることも拒否する。素材へのこだわり。二等立地にも足を運ばせるファンづくり。
確かに、この景気の低迷は消費者の価格に対する敏感さを一層高めている。価格調整を考えるものムリはないかもしれない。しかし、本来のポジションから考えると、「低価格メニュー」は一層、体力を弱め、顧客ベースを危うくするように思えてならない。

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金森 努

有限会社金森マーケティング事務所 取締役

コンサルタントと講師業の二足のわらじを履く立場を活かし、「現場で起きていること」を見抜き、それをわかりやすい「フレームワーク」で読み解いていきます。このサイトでは、顧客者視点のマーケティングを軸足に、世の中の様々な事象を切り取りるコラムを執筆していきます。

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