リーマンショックから10年が経ちました。 皆さんご存知の通り、リーマンショックとは、2008年9月15日に米投資銀行であるリーマン・ブラザーズが経営破綻したことを端に発し、連鎖的に世界規模の金融危機が発生したことを総括的に呼びます。 2007年頃から、その兆しが出ていました。別の見方をすれば、サブプライムローンと呼ばれる住宅投資金融商品に投資家が飛びついたことが発端であったとも言えます。
リーマンショックの背景
当時、米国経済は好調に推移し、そしてバブル気味の経済状況でした。低所得の米国民でも、少々金利の高いローンを組んで住宅を所有することが可能な時代だったのです。そして、その住宅を転売して更に高額な住宅を購入するのが彼らの行動パターンとなっていました。
このときの金融機関は大きな判断ミスをしていました。住宅を購入する際の審査方法が甘くなり、低所得者でもローンを組める仕組みを作り上げてしまったのです。
サブプライムローンの罪は、審査基準が甘くなったローン、つまり返済不能となる可能性があるローンを組み込んだファンドが、各種不動産ファンドに組み込まれてしまったことです。
不動産証券について言えば、負債部門(デット)の優先出資部分の下に位置するメザニン部分への投資に、サブプライムローンが組み込まれていたことです。ローンによっては審査基準が不明であったことから、優先部分に組み込まれていたローンもあったようです。
メザニン部門は優先部分よりも金利が高いため、投資家も「不動産神話があったところで、投資していても、大丈夫であろう、倒産リスクはないのだろう」と考え、危機感はなかったようです。しかし、いったん問題が発覚すると、金融機関の破綻の連鎖が始まり、最終的にはリーマン・ブラザーズという巨大金融機関まで破綻する結果となりました。
FRBの判断
金融危機の深刻化を実感していた中央銀行つまり米連邦準備銀行(FRB)は、金利をゼロ近辺まで引き下げ、また、国債などを積極的に購入して、金融市場への資金供給に努めました。
下記グラフ(出所:FRB)は2008年1月時点から現在に至るまでのFRBの政策金利フェッド・ファンド・レート(FF Rate)の推移を示しています。
2008年1月には4%に設定していましたが、同年10月には2%まで引き下げ、さらに2009年1月にはゼロ金利に近い水準にまで一気に引き下げる決定をしています。それほど、リーマンショックの金融危機の深刻さが根深いとFRBが判断したと言えるでしょう。その後、ゼロ金利に近いFF Rateは2016年まで続くことになりました。これはFRBがリーマンショックの再発防止に躍起になり、その結果、利上げには慎重姿勢を崩さなかったと見ることが出来ます。
米国経済のダイナミック性
この期間において、NY株価の動向はどのように推移したのでしょうか。
下記グラフ(出所:Yahoo Finance)は過去10年のNYダウ平均の価格の推移を示しています。
これを見ると、リーマンショック後の2009年には7,500の水準まで下げましたが、その後は一貫して右肩上がりのチャートの形状となっています。直近で見ると、25,000を超えています。つまり、危機意識が非常に強いFRBが金利を低水準にした結果、投資家心理が急速にリスク志向に向かってしまったのだと推測できます。
人間というものは、悪いことは直ぐに忘れてしまうもので、メディアでは、サブプライムローンの問題は深刻であり、リーマンショックは金融機関の再編を早めるのだと囃し立てていました。それを受け、FRBと米政界がリーマンショックの解決に全力に取り組んだ結果、2009年以降は急速に米経済の回復基調が強まったのです。
旧来の経済観念にはとらわれず、そしてIT革命が急速に進行するのが米社会であり、アマゾン、フェイスブック、マイクロソフトなどの巨大IT企業が米経済のけん引力となりました。ここには米国経済のダイナミック性を感じます。
米国社会は、今回のテーマであるリーマンショックや、1980年代に起きたブラックマンデーという経済危機からも、その脱出スピードが速いと言えるのです。
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